ロードセルは、質量信号を測定可能な電気信号に変換する主要な部品であり、産業用計量、電子はかり、自動生産ライン、物流・倉庫などの分野で広く使用されています。選定の肝心な点は実際の要件に合致させることです。過度に高い性能を追求してコストを無駄にするのを避け、一方で性能不足によって測定精度や安定性に影響を与えることも防ぐ必要があります。以下では、主要なパラメータ、用途への適合性、実用的なアドバイスを組み合わせた体系的かつ実行可能な選定プロセスを紹介し、正確な選定をサポートします。
ステップ1:主な要件と使用シーンの明確化(選定の基礎)
選定に先立って、「何を測定するのか、どのような環境下で測定するのか、どのように設置するのか」を明確にする必要があります。これがその後のパラメータ選定の前提となります。
1. 主な測定要件
- 測定対象:固体(塊状/粒状)、液体、または気体か?腐食性または粘性はあるか(例えば、センサーに付着する液体など)?
- 測定範囲(容量):最大計量値(測定対象物+容器/ブラケット、およびその他の補助的な重量を含む)を指定し、衝撃荷重や過負荷によるセンサー損傷を防ぐため、1.2~1.5倍の安全係数を確保すること。例:実際の最大計量が50kgの場合、60~75kgの範囲のセンサーを選定すべき。動的計量(例えば、生産ライン上の材料など)の場合は、衝撃に対応するため、1.5~2倍の安全係数を確保することを推奨する。
- 測定精度の要件:取引決済用(法的計量認証が必要)ですか、プロセス監視用(ある程度の誤差を許容)ですか、それとも高精度な実験室測定用ですか?例:電子料金秤はOIML Class IIIの精度を満たす必要があります(誤差 ≤ ±0.1%)。工業用バッチシステムでは通常、±0.05%~±0.1%の精度が要求され、一般的な倉庫用計量では誤差が≤ ±0.5%程度でも許容されます。
- 動的/静的要求:静的計量(例:プラットフォームスケール、タンク計量)ですか、それとも動的計量(例:ベルトスケール、高速分選ライン)ですか?動的シナリオでは「応答速度」の強調が必要です。
2. 設置および空間条件
- 荷重のかけ方:引張(例:懸垂計量)、圧縮(例:プラットフォームスケールの受皿)、またはせん断力(例:片持ち梁式設置)ですか?
- 設置スペース:センサーの外寸(長さ、直径、取り付け穴間隔)は、装置の構造と互換性がありますか?例:薄型センサーは狭いスペースに適しています(例えば小型電子はかり)。タンクの大型重量測定には、荷重能力が高く設置スペースが小さい柱状/ブリッジ型センサーが必要です。
- 設置台数:単点での計量(例:小型プラットフォームスケール、1台のセンサー)か、多点での計量(例:大型サイロ、プラットフォームスケール、3~4台のセンサーを並列に使用)か?多点計量では、「ブリッジ接続可能」なセンサーを選択し、力の均等な分配を確保する必要があります。
3. 環境条件(センサーの安定性に影響を与える重要な要因)
- 温度:動作環境温度範囲(-40℃~85℃が一般的。窯の近くなどの高温環境では耐高温型、冷蔵庫内の低温環境などでは低温補償型が必要)。注意:温度ドリフトは精度に影響するため、「温度補償」機能付きのセンサーを選定してください(補償範囲は実際の周囲温度をカバーしている必要があります)。
- 湿度/保護:湿気の多い環境(例:工場内の洗浄作業、屋外の雨)、粉塵のある環境、または腐食性環境(例:化学工場、酸・アルカリ溶液)で使用されますか? 防護等級(IP規格)で定義します。屋外/湿気の多い環境では≥IP67(防塵、短期間の浸水保護)、腐食性環境では≥IP68(防塵、長期的な浸水保護)以上を推奨し、耐腐食性材料(例:ステンレス鋼316L)を選択してください。
- 干渉要因:振動(例:生産ライン、工作機械の近くなど)や電磁干渉(例:インバータ、モーターの近くなど)はありますか?振動環境では「耐振動」設計のセンサーを選定してください。電磁干渉がある環境では、シールド線付きでEMC認証を取得したセンサーを選定してください。
ステップ2:センサータイプの選択(原理/構造に応じた適用シーンとのマッチング)
ロードセルのタイプは、その基本原理と構造によって決まります。異なるタイプは適用可能なシーンにおいて大きな違いがあるため、「荷重のかけ方、精度、使用環境」に基づいて選定する必要があります。
| センサータイプ |
基本原理 |
利点 |
欠点 |
典型的な適用シナリオ |
| ひずみゲージ式(主流) |
金属製の弾性体が力を受け変形し、その ストレインゲージ 変形を電気信号に変換する |
高精度(±0.01%~±0.1%)、中程度のコスト、広い測定範囲(1g~1000t)、優れた安定性 |
温度の影響を受けやすい(補償が必要)、強い腐食には耐えられない(一般的な材質の場合) |
電子スケール、バッチングシステム、タンク計量、産業用計測 |
| 静電容量式 |
力が加わった際のキャパシタ板間距離の変化を電気信号に変換 |
振動・衝撃に強い、耐高温(-200℃~800℃)、機械的摩耗なし |
やや低い精度(±0.1%~±0.5%)、湿度の影響を受けやすい |
高温環境、振動のある環境(例:鉱山機械) |
| 圧電式 |
圧電材料が力を受けた際に電荷信号を発生 |
極めて高速な応答速度(マイクロ秒レベル)、動的計量に適している |
静的計量には不適(電荷の漏れあり)、温度による精度への影響が大きい |
高速動的計量(例:ベルトスケール、選別ライン) |
| 油圧式 |
力が加わった際の油圧油圧の変化を電気信号に変換 |
過負荷耐性が強く、過酷な環境(高温・高圧)に耐える |
精度が低い(±0.5%~±1%)、応答速度が遅い |
重機械(例:クレーン)、高温高圧環境での使用 |
| 電磁力バランス方式 |
電磁力で重力を釣り合わせ、電流フィードバックによって計測を行う |
極めて高い精度(±0.001%~±0.01%) |
高コスト、測定範囲が小さい(≤50kg)、環境条件への要求が高い |
実験室用精密測定、標準分銅の較正 |
主要な選定の提案:
- ほとんどの産業用途(静的計量、精度要件±0.01%~±0.5%)では、歪みゲージ式を優先(最も高いコストパフォーマンスと適応性)。
- 動的計量(応答速度<10ms)には、圧電式または高速歪みゲージ式を選択。
- 実験室での高精度測定には、電磁力バランス式を選択。
- 高温/強い振動/強い腐食環境では、特殊材料(例:316Lステンレス鋼、セラミック弾性体)を使用した歪みゲージ式または静電容量式を選択。
ステップ3:主要技術仕様の確認(要件に正確に適合)
タイプを決定した後は、技術仕様を詳細に調整し、「仕様過剰」または「仕様不足」を回避してください。
1. 精度関連パラメータ(測定精度を決定する主要指標)
- 総合誤差(非直線性+ヒステリシス+再現性):選定時に「総合誤差 ≤ 実際に要求される誤差」を満たす必要がある。例:要求誤差 ≤ ±0.1%の場合、センサーの総合誤差は≤ ±0.05%でなければならない(余裕を確保)。
- 感度:単位重量に対する出力信号(例:2mV/V)。これはセンサーの「検出能力」を示す。推奨事項:複数点での計量における信号の整合を容易にするため、同じロット内のセンサー間で感度のばらつきが小さいこと(感度偏差 ≤ ±0.1%)が望ましい。また、出力信号は後段の増幅器およびデータ収集装置の入力範囲と一致していなければならない(例:増幅器の入力範囲が0~10V、センサー感度が2mV/V、励起電圧が10Vの場合、最大出力は20mVであるため、増幅器は信号増幅機能を持つ必要がある)。
- ゼロドリフト:無負荷状態において、時間および温度変化に伴うセンサー出力信号の変動(例:±0.01%FS/℃)。ドリフトが小さいほど、長期的な安定性が高い。
2. 環境適応パラメータ
- 温度補償範囲:実際の動作温度(例:-10℃~60℃)をカバーする必要があります。そうでない場合、精度が大幅に低下します。
- 保護等級(IP):環境に応じて選択してください(前述の通り)。
- 注:IP67は短期間の浸水(水深1mで30分間)を防止でき、IP68は長期間の浸水を防止でき、IP69Kは高圧洗浄(食品工場での洗浄など)を防止できます。
- 干渉に対する耐性:電磁干渉がある環境では、シールド線(例:ツイストペアシールド線)およびCE/EMC認証付きのセンサーを選択してください。振動のある環境では、「耐振レベル」が実際の振動周波数以上であるセンサーを選択してください(例:振動周波数≤50Hzの場合、センサーの耐振レベル≥100Hz)。
3. 出力信号および電源
-
出力信号の種類:後続機器(アンプ、PLC、ディスプレイなど)と互換性があるものである必要があります。
- アナログ信号(主流):電圧信号(例:0~5V、0~10V)、電流信号(4~20mA、長距離伝送に適しており、干渉に対する耐性が強い)、差動信号(例:2mV/V、アンプによる変換が必要)。
- デジタル信号(RS485、CANバス、Modbusプロトコル):干渉に対する耐性が強く、アンプを介さずにPLC/コンピュータに直接接続可能で、多点計量(例:4個のセンサを並列ネットワーク接続)に適している。
- 電源電圧:一般的には5V、10V、24V DC。電圧変動による出力信号の不安定を防ぐため、安定した電源供給(変動幅≤±5%)を確保すること。
4. 構造および設置パラメータ
-
外装構造:荷重のかけ方や設置スペースに応じて選定。
- 片持ち梁タイプ:プラットフォームスケール、電子台はかりに適する(単点/二点支持、設置が簡単、測定範囲1kg~5t)。
- ブリッジ/柱状タイプ:大型タンク、トラックスケールに適する(高い耐荷重能力、測定範囲10t~1000t、偏心荷重に対する耐性が良好)。
- S型引張タイプ:懸垂式の計量に適しています(例:クレーン、ホッパーの懸垂計量)。測定範囲は10kg~50tで、引張/圧縮の双方向測定が可能です。
- 薄型/マイクロタイプ:狭小スペースに適しています(例:小型電子秤、医療機器)。測定範囲は1g~10kgです。
- 取り付けインターフェース:センサーの取付穴の種類(ねじ穴、貫通穴)および穴間隔は、装置のブラケットと一致している必要があります。取り付け誤差による「偏心荷重誤差」(力の不均一分布による計量精度への影響)を回避するためです。
ステップ4:選定ミスを避け、実用上の細部に注意する
1. よくある選定ミス
- ミス1:「精度は高ければ高いほど良い」と考える—高精度センサーはコストが高く、環境および取り付け条件に対する要求が厳しくなります(例:実験室用センサーは、工業現場での振動により精度を失う可能性があります)
- 誤り2:レンジが要求仕様と完全に一致していること――安全率がなく、衝撃や過負荷(例えば、落下する材料による瞬間的な過負荷)によってセンサーが損傷しやすい。
- 誤り3:偏心荷重の影響を無視すること――複数点での計量(例:4つのセンサーで支持されるプラットフォーム)において、「偏心荷重対応」のセンサーを選定しないと、プラットフォーム上の異なる位置で計量結果が不一致になる。
- 誤り4:信号の互換性を無視すること――センサーの出力信号がアンプ/PLCと互換性がないため、追加の変換モジュールが必要となり、コストと故障ポイントが増加する。
2. 実用上の注意
- 多点計量には「ブリッジ互換性」が必要:複数のセンサーを並列接続する場合、感度および出力インピーダンスが一致したセンサー(偏差 ≤ ±0.1%)を選択し、専用のジャンクションボックスを使用して信号を均等化する。
- 環境への材料適応:一般的な用途にはステンレス鋼304を、腐食性環境には316Lまたはセラミックを、高温環境にはインコネル合金を選択してください。
- 校正およびメンテナンス:取引決済用途では、「校正可能」でOIMLやNTEPなどの法的認証を取得したセンサーを選定してください。産業用途では、校正周期(例:年1回)を考慮し、校正作業が簡単なセンサーを選んでください。
- サプライヤーの資格:業界での実績があり、技術サポート(例:設置ガイド、信号デバッグ)を提供できるサプライヤーを優先し、低価格で低品質なセンサー(短期間は使用可能だが、長期的なドリフトが大きく、寿命が短い)を避けてください。
代表的な用途別選定例(クイックリファレンス)
| 適用シナリオ |
推奨センサータイプ |
主要パラメータの選定 |
| 電子計量秤(取引決済用) |
ストレインゲージ片持ち梁 |
測定範囲=最大測定重量の1.2倍、OIML Class III精度、IP65保護、電圧出力(0~5V) |
| 大型タンク用計量(10t~100t) |
ストレインゲージ式コラム/ブリッジタイプ |
測定範囲=最大測定重量の1.5倍、総合誤差±0.05%、IP67保護、4~20mA電流出力(長距離伝送対応) |
| 高速分選ライン用動的計量(5kg以下) |
圧電式/高速ストレインゲージタイプ |
応答速度<5ms、測定範囲=最大測定重量の2倍、IP65保護、デジタル信号(RS485) |
| 化学工場での腐食性液体の計量 |
ストレインゲージS型(316L材質) |
測定範囲=最大測定重量の1.5倍、IP68保護、温度補償-10℃~80℃、4~20mA出力 |
| 実験室用精密はかり(1g~1kg) |
電磁力バランス方式 |
精度 ±0.001%、温度補償 0℃~40℃、デジタル信号(USB/RS232) |
要約:選定の核心的ロジック
ロードセル選定の本質は、「要件→種類→パラメータ→詳細」への段階的なマッチングです。まず「何を、どこで、どのように取り付けるか」を明確にし、次に適切なセンサ種類を選定し、その後、測定範囲、精度、保護等級、信号などの主要パラメータで正確に実装します。また、誤りを避け、取り付けやキャリブレーション、互換性といった実務上の細部にも注意を払う必要があります。
特定のパラメータについて不确定な場合は、以下の情報を提供してサプライヤーに相談できます。
① 最大計量値(補助重量を含む)
② 精度要件
③ 使用環境の温度/湿度/腐食状況
④ 取り付け方法(引張/圧縮/設置スペースのサイズ)
⑤ その後に接続する機器(例:PLCモデル、アンプの種類)について、サプライヤーが的確な推奨を行うことができます。